不動産投資を検討するにあたり、不動産業者又はネットより物件資料を入手し、検討するのが一般的だと思いますが、その数はかなりの量となります。その膨大な物件の中から試算し、自分の思い描くような物件を見つけるのはかなり大変だと思います。理由としては、土地・建物代金については物件資料に於いて明確となっていますが、その他にかかる費用(諸費用)が不明確なため、現実的な事業試算が出来ないことにあるのではないでしょうか。
いざ購入となった時には、詳細を不動産業者又は、建築会社から提示してもらえるとは思いますが、どうするかわからない数多くの物件すべてを、専門となる税理士や司法書士に見積もりを依頼するわけにはいかないと思います。よって、正式な見積もりは後々専門家に依頼するにしても、自分自身で概算を算出することができるスキルが必要になります。そのスキルがなければ、ある程度、話が進んだ段階で大きく計画が狂ってしまい、結果として、借入額が増えたり、自己資金を予定以上に出さないといけない事になってしまう。こういうことは避けたいものです。
それでは、その諸費用にはどのようなものを予定しておかなければならないか、最低限必要な項目を提示し、それぞれの諸費用は、何をもとに、どのように算出すれば良いかを解説していきたいと思います。
説明するにあたり、具体的な内容が必要ですので、前回説明した、「不動産投資を検討する場合の収支計算方法」の「物件資料の内容」をもとに説明を致します。
その条件をもとに算出した結果が、諸費用の合計として 7,137,000円 となっています。その詳細を下記に示します。
諸費用項目の説明
諸費用として必要だろうと思われる項目を一覧で表示しています。この中には、土地を購入して、建物を新規に建築する場合に、必要となる諸費用も含まれていますが、今回は、中古マンションを購入するものに限定して説明をしていきたいと思います。
また、あくまでもこの段階では、検討をするために概算で算出をしてみるとの考え方で、少し高め位に算出することをお勧めします。最終段階では、専門家にすべて見積もりを出してもらう事になりますが、その前段階だとお考え下さい。
印紙代
印紙代とは、契約書、受取書、証書、通帳などを作成する際に課税される税金。国税であり、印紙税には、印紙税法に定められている20種類の文書(課税文書)に対して課税される。今回に於いては、物件購入に際して、不動産売買契約書を作成するが、売主、買主それぞれが印紙を貼る必要があります。
印紙代 算出方法
平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成される、不動産譲渡契約書について印紙税の税額が軽減されています。軽減後の税額は、いずれも契約書に記載された契約金額により、次のとおりとなります。
記載された契約金額 | 税額 |
10万円を超え50万円以下のもの | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 1千円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 5千円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
この例題では、物件価格が9,000万円となっていますので、印紙税は 30,000円 となっています。
抵当権・根抵当権設定登記費用
抵当権設定登記の費用とは、登録免許税等の登記の際に必ずかかる実費と、司法書士に抵当権設定登記を依頼した場合の司法書士への報酬(手数料)との合計額をいいます。 抵当権設定登記を自分でする場合は実費のみが登記費用になり、司法書士に登記を依頼する場合には実費に司法書士への報酬が加算されるということです。
抵当権・根抵当権設定登記費用 算出方法
抵当権については、抵当権と根抵当権の2種類がありますが、設定額に違いがあります。根抵当権の場合、借入額に1.2倍した額を設定額としますので、根抵当権の方が割高となります。よって、根抵当権で算出を行います。
登録免許税・・・・・・設定額 × 4/1000
司法書士手数料・・・・5~10万円
この例題では、借入額が9,000万円となっているので
(9,000万円×1.2)× 4/1000 + 10万円 = 532,000円
損害保険料・火災保険料
損害保険料・火災保険料とは、購入した物件に対して掛ける保険料。以前は、30~35年の長期で加入できる保険もあったが、現在は最長でも10年までの保険が一般的となりました。また、地震保険については、火災保険の保険金額の30~50%の範囲で保険金額を決めることが可能です。ただし、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度です。また、期間としては最長で5年となっています。
また、昨今の異常気象により、保険会社が負担する保険金額が大きくなっている為、今後とも上昇傾向にあります。
損害保険料・火災保険料 算出方法
損害保険料・火災保険料については、令和3年の年末には大きな制度改定が見込まれていますので、それを待って記述したいと思います。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社の仲介業務(売買や賃貸)に対して⽀払われる報酬のこと。
依頼された売買や賃貸の契約を成⽴させる⼿助けをすることに対しての報酬となるので、契約が成⽴しなければ、仲介⼿数料は発⽣しません。
ただし、契約が成⽴した時点で仲介⼿数料が発⽣するので、契約成⽴した後にその契約を解約する場合には仲介⼿数料を請求されるケースもあります。⼿付⾦による解約をした場合や、違約による解約となった場合は、物件の引き渡しがなくても仲介⼿数料を求められることがありますので注意が必要です。
仲介手数料 算出方法
仲介手数料については、(物件価格×3%)+ 6万円 + 消費税 なので
この例題では、土地・建物代金が9,000万円
(9,000万円×3%)+ 6万円 + 276,000円 = 3,036,000円
土地・建物評価額が不明な場合の対処方法
不動産取得税や所有権移転登記費用を算出するときに、必要となる基礎の価格が評価額になります。売主から固定資産評価証明の提示を受けることが出来れば、評価額はそれを見れば一目瞭然なのですが、固定資産評価証明の入手がまだ出来ない場合は、どのように概算算出するかは「土地・建物評価額が不明な場合の対処方法」を参照してください。
土地評価額 22,628,410円
建物評価額 42,312,651円
不動産取得税
土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得したときに、取得した方に対して課税される税金です。有償・無償の別、登記の有無にかかわらず課税となります。
不動産取得税 算出方法
不動産取得税については、特例により以下のように標準税率が軽減されています。
1.土地・・・・・ 3%(2024年3月31日まで)
(1).宅地の課税標準額の特例
宅地の課税標準額が1/2となる特例
宅地の課税標準額 = 土地評価額 × 1/2 (2024年3月31日まで)
この例題では、土地評価額が 22,628,410円 なので、
22,628,410 × 1/2 × 3% = 339,426円
2.住宅・・・・・ 3%(2024年3月31日まで)
この例題では、建物評価額が 42,312,651円 なので
42,312,651円×3%=1,269,380円
3.住宅以外の家屋 4%
よって、不動産取得税は 1,608,806円 となっている。
ファイナンス手数料
ファイナンス手数料とは、金融機関に対して「ローンの申し込み手続きの報酬」として支払う費用です。金融機関によっては、外部の機関に依頼をして、担保評価を出してもらっていることもあり、それらの支払いに充当されることもあります。
一律で、100,000円 を算入しています。
所有権移転登記
所有権移転登記とは、所有権移転登記とは、土地や建物を購入したときに、その所有権が売主から自分(買主)に移ったことを明確にするために行う登記です。費用を大きく分けると登録免許税、司法書士報酬になります。
所有権移転登記 算出方法
登録免許税・・・・・・評価額 × 20/1000
司法書士手数料・・・・3~5万円
この例題では、土地・建物評価額合計が64,941,061円なので
(64,941,061×20÷1000)+ 50,000 = 1,348,821円