出口戦略を決めて投資判断をするべき

収益(被相続人)

不動産投資を検討する場合に、購入した物件を最終的にはどのようにするかを決めることが大切になります。例えば、建物が使用できなくなれば解体して、土地を更地にして売却する又は、建替えて新たな事業を開始する。または、数年所有した後に利回り物件として売却する等、様々な方法がありますが、それを不動産投資の出口戦略として説明をしたいと思います。その不動産投資の利益確定をどのようなプロセスで判断すれば良いかを例題を交えながら示していきます。

出口戦略決定までの考え方

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上記に示すものが、前提条件あり・大規模修繕ありの損益・資金繰り予想になります。それでは、各年度を見ていきましょう。

・4ページ目(31年度~40年度)
この時期になると建物の築年数が52年~61年となっていますので、収益物件としてそのまま売却できればそれが一番いいのですが、現実的には解体して更地として売却とのなるのかなと思います。

・3ページ目(21年度~30年度)
この時期では建物の築年数が42年~51年なので、利回りを上げてやることで収益物件として売却をするという選択肢も可能かと思われます。よって、更地で売却と収益物件として売却の両面から条件の良い方を選択したいと思います。

・2ページ目(11年度~20年度)
この時期では、建物の築年数が32年~41年ですし、19年度での外壁塗装の修繕も予定しているので保有する方向性ではありますが、手取り収入(収益-支出)を見て頂くとわかるように、それほどの収益が上がっていません。よって、もう一つの選択肢として、外壁塗装を行う前に売却する事も検証してみたいと思います。

・1ページ目(1年度~10年度)
今回は除外。

以上のことから、下記に示す5パターンで最良の出口戦略はどれなのかを検証していきます。
1.36年後に更地で売却
2.31年後に更地で売却
3.26年後に収益物件として売却
4.21年後に収益物件として売却
5.外壁塗装をしないで、15年後に収益物件として売却

出口戦略計算方法の説明

出口戦略として考えられるのは、大きく分けて3つになると思います。まず、一つ目が、建物を解体後に更地として売却する事。2つ目が、利回り物件としてそのまま売却する事。3つ目が、現在、入居している入居者に退去してもらい、建物を解体後、新規に建物を建築する事がありますが、この方法では通常、建築する際の費用として、解体費用・退去費用は組み込まれた形で提案されますので、ここではそのタイミングがいつが良いのかを想像しながら見てください。

説明するうえで、現在検証している物件の購入条件及び、購入時の諸費用詳細は
不動産投資を検討する場合の収支計算方法
不動産投資に於ける諸費用の算出方法について
でご確認ください。

建物解体後に、更地として売却

上記に表す左側の部分について、項目内容及び、計算方法について説明したいと思います。

譲渡収入の詳細説明

譲渡収入の部分ですが、まず、最初に決めないといけない事は、売却する土地の坪単価です。この場合は、購入段階の坪単価が271,102円なので、同じくらいの金額では売れるだろうとの判断で、売却時坪単価270,000円と設定しています。よって、売却時土地価格①が26,028,000円となります。

土地取得費の詳細説明

土地取得費の部分の、土地取得に要した費用については、購入時の仲介手数料の3,036,000円がこれにあたります。

譲渡費用の詳細説明

譲渡費用の部分ですが、まず、解体費用は坪単価を80,000円と設定しました。(この部分は、地域差もあるとは思いますが、私は木造・軽量鉄骨は50,000円ほど、重量鉄骨は60,000円ほど、鉄筋コンクリートは80,000円ほどで概算を出しています。)よって、解体費用合計②が14,990,400円となります。

次に、建物簿価【36年後】ですが、これは建物の減価償却費の残額となります。内訳を説明すると、中古物件購入の場合、建物本体の償却期間は、残存期間+(経過期間×0.2)なので、鉄筋コンクリートの償却期間47年と築年数21年との設定により、47-21+(21×0.2)=30年なのでこの時点では0円。設備の償却期間は15年なので、同じくこの時点では0円。残りは、大規模修繕で追加となった減価償却費(室内リフォーム:136,800円、エレベータ取替:708,000円、外壁塗装:269,827円)づつ償却していった残額が2,710,858円 (室内リフォーム:912,000円、エレベータ取替:この時点では償却済み、外壁塗装:1,798,855円) となります。

次に、退去費用ですが、この考え方としてはその時点で入居している人に対しては、立ち退き費用として家賃の6か月分を支払ったうえで退去してもらうという事です。よって計算式としては、
((当初平均家賃×下落率)+大規模修繕での上乗せ家賃)×(戸数×入居率)×6か月
35年目の段階で、30%の下落率、入居率は40年間通して92%の設定ですので
((34,616円×70%)+2,000円)×(19戸×92%)×6か月 の計算より求めった結果です。

次に売却時仲介料ですが、土地の売却価格を26,028,000円、仲介手数料3%、消費税10%と設定しているので、
((26,028,000円×3%)+60,000円)×(1+10%) の計算式より求めた結果です。

課税譲渡所得の詳細説明

譲渡所得とは、譲渡収入から経費を引いたもので、これに対して税率を掛けることにより譲渡税を算出します。この場合の経費にあたるものが取得費と譲渡費用になります。
譲渡収入:26,028,000円
取得費 :26,134,220円+3,036,000円=29,170,220円
譲渡費用:14,990,400円+2,710,858円+2,751,113円+924,924円=21,377,295円

譲渡収入ー(取得費+譲渡費用)によりー24,519,515円となります。

売却時譲渡税の詳細説明

譲渡税は、上記の譲渡所得に対して、20%の税率で計算をされます。ここで、注意点が二つあります。まず、一点目は、所得税(15%)はその年の確定申告時に納税しますが、住民税(5%)は翌年の住民税に上乗せされるので支払時期が違うこと。二点目は、5年以内の譲渡となると税率が20%から50%へ上昇する事が注意点です。上記の例では、マイナスとなっているので譲渡税は0円となっています。

借入残高の詳細説明

金融機関への借入期間中に売却をすることも可能ですが、借入残金を譲渡と同時に返済を求められます。よって、その金額の算入が必要となります。この例の場合、36年目の段階での借りれ残金は、0円となっていますが、購入時と大規模修繕での3つの借り入れがありますので、売却予定年の段階でのそれぞれの借入残額を加算する事になります。

利回り物件として、そのまま売却

続いて、利回り物件として売却する場合ですが、まず決めないといけないのは、いくらの利回りで売却をするのかという事です。買い手があるわけですから、その利回りで必ず売却できるわけではありませんが目安を建てることが大切です。

売却条件・譲渡収入の詳細説明

この36年後売却の条件としては、築年数が既に57年となっていることから、現実的には買い手を見つけることが困難であるとの予想がつきますので、左側の「建物解体後に、更地で売却」を選択していますが、参考までに利回り15%の場合を算出しています。

売却土地代金は、「建物解体後に、更地で売却」時に坪単価270,000円と設定しました。よって、利回りを15%と決めることで、譲渡収入となる土地建物合計①が必然的に決まり、建物代金も決まります。
この場合の土地建物合計①の計算式とは、

((その時の家賃総額+駐車場代+共益費)×戸数×12か月)÷(利回り÷100)

家賃総額:(当初平均家賃×下落率)+大規模修繕での上乗せ家賃
駐車場代:当初駐車場代×下落率
共益費 :当初共益費

となり、結果として、48,076,000円が求められ、そこから土地代の26,028,000円を引くことにより建物代の22,048,000円が導き出されています。

また、「利回り物件として、そのまま売却」するわけですから、解体費用と退去費用は不要なので除いた計算となり、売却時手残りが43,515,009円となっています。もし仮に、この時点で、そのままで購入したい人がいれば、利回りを16%・17%に上げても、そちらの方が有利であることがわかります。

出口戦略(5パターン)を検証してみる

上記のような計算内容で、出口戦略を5つのパターンで検証してみることにします。自分ならどれを選択するかを考えながら内容を確認してください。

36年後に更地として売却

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31年後に更地として売却

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26年後に収益物件として売却

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21年後に収益物件として売却

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外壁塗装をしないで、16年後に収益物件として売却

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まとめ

上記の5パータンに、41年後に更地で売却の条件を追加して一覧表にまとめてみます。41年後については、40年後の手取り累計64,621,946円に更地で売却時の7,543,088円を加えた金額です。また、表を参照するうえで、以下の点を考慮のうえ見てください。

21年後の利回り11%は、19年後に外壁塗装の修繕を行っていることから、12%程度の所を1%利回りを下げて計算している。

9年後(築30年)でエレベータ取替を実施しているが、24年後(築45年)前後にはエレベータ補修(500万円程度)が必要となるタイミングである。

19年後までしか修繕計画を組んでいないが、31年後以降も長期保有するのであれば、それなりの大規模修繕計画が必要となる。

16年後21年後26年後31年後36年後41年後
築年数築37年築42年築47年築52年築57年築62年
売却時利回り11%11%13%
更地で売却30,695,87851,953,78172,165,034
そのまま売却40,955,93748,760,81757,839,541

上記の表を見てわかる事は、

19年後の外壁塗装をしてから売却する場合と、費用を掛けずに早い段階で売却する場合を比較すると、売却時の利回りに反映できれば、大規模修繕への投資をしても十分な見返りが期待できる場合もある。

この例題からすると、利回り物件として売却できる間に売却をするか、または、35年~40年以上の長期保有をする事により最終的な手取り累計を増やすことが出来る。

以上のことを踏まえたうえで、この不動産投資があなたの投資スタイルとしてどうなのかを判断する必要があると思います。人によっては、早い段階で投資の利益確定をして、次の投資へと回したい人もいれば、次への投資資金は他に確保してあるので、この投資で充分な利益が出るところで出口戦略としたい人もあると思います。事情は人それぞれだとは思いますが、投資判断をするには少なくても、この程度の検証は必須だと考えます。

次回は、例えば26年後に「利回り物件として、そのまま売却」を選択したとします。その場合に出た利益を繰上返済に回した場合に効果はあるのか。あるとすればどのくらいの効果があるのか。返済額軽減と期間短縮の何れの方が効果があるのかなどを説明したいと思います。

「不動産投資に於ける繰上返済の効果はどれくらいあるのか」

をご期待ください。

収益(被相続人)
サイト管理者
小泉 康

29歳までの7年間は、システムエンジニアとして働いていましたが、その後、不動産業界へと転職し、17年間は営業職として勤務。その後、独立して約10年となります。不動産業界で得た知識とシステムエンジニアとしての経験を活かし、不動産投資シミュレーションを開発。そのソフトを利用して、不動産投資の役立つ情報を発信していきます。

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