土地・建物評価額が不明な場合の対処方法

収益(被相続人)

不動産投資を検討するときに、物件資料にて検討を始めるが、この段階では土地・建物の固定資産評価額が不明の場合がほとんどである。売主へ依頼して固定資産評価証明を入手すれば明確とはなるが、検討段階でそれを入手することは困難である。よって、ある程度の想像のもとにシミュレーションを行う必要がある。たくさんの物件資料の中から、自分の求める投資物件を見つけ出す作業に於いて、毎年の固定資産税及び、諸費用を概算で算出するのに必要となる、土地及び建物の評価額算出方法を説明したいと思います。

固定資産評価証明がない場合の土地評価額について

1.固定資産税路線価等

路線価とは道路に面する宅地の1㎡あたりの評価額を言います。 この場合、固定資産税の算定に使用される土地の評価額は固定資産税評価額といい、相続税路線価と同様に道路に付随して価格が定められていることから「固定資産税路線価」と呼びます。諸費用の不動産取得税・所有権移転登記を算出する場合に、この評価額を使用します。

固定資産税路線価を調べるのに便利なサイトが「全国地価マップ」です。こちらを私はいつも使用させてもらっています。(スマートフォンサイトはこちらから)

「固定資産税路線価等」を選択すると、利用承諾画面が表示されますので、内容を確認後、「同意する」を選択。そうすると位置選択画面が表示されますので、該当する場所を選択していくと以下のような画面が表示されます。

ここに表示されている金額に、土地の面積を掛けたものが不動産取得税・所有権移転登記を算出する場合の土地評価額となります。

この例題では、土地面積が318.71㎡で、固定資産税路線価が71,000円と設定しているので

      318.71㎡ × 71,000円 = 22,628,410円  となっています。

2.相続税路線価等

相続税や贈与税を算出する為の相続税路線価も、このサイトで同様に確認できますが、サイト運営上タイムラグ等も考えられますので、私は国税庁のサイトを参照しています。

       国税庁サイト「路線価図・評価倍率表

該当する場所を選択していくと、以下のような画面で相続税路線価を確認することができます。

この例題では、路線価を82,000円と設定していますので、

      318.71㎡ × 82,000円 = 26,134,220円  となります。

この数字は、まだ出てきていませんが、相続税に関する記事を見て頂くときに必要となります。

固定資産評価証明がない場合の建物評価額について

正確な固定資産評価額がわからない場合に、根拠のある何の価格を使って建物評価額を算出すればいいかですが、私は以下のような方法を使っています。

新築建物課税標準価格認定基準表について

登記を行う場合、固定資産課税台帳の価格がない場合は、登記所が認定した価格で行うことになっています。例えばどのような場合が該当するかといえば、新築の建物などは、当然のことながら固定資産課税台帳にまだ存在しません。よって、この場合は、登記所が認定した価格で課税標準額を算出しています。

この「登記所が認定した価格」といわれるものを使用して、概算を算出する事が賢明であると思います。この価格は、登記所が前年までの統計より導き出した数字なので、十分な信用に値するものだと思います。ただ、注意しないといけないのは、一つ目として、この価格がそのまま、市町村が評価する固定資産評価額になるのではない事。知り合いの司法書士に、この新築建物課税標準価格と、実際に固定資産台帳に登録された価格を見比べると、どのようになっているかを聞いたことがありますが、各法務局で、ばらつきはあるものの、新築建物課税標準価格の方が若干高い傾向があるようだとの話でした。二つ目は、地域差があるので各法務局で、結構、価格に違いがある事です。因みに、令和3年~令和5年度版が発表されているので、共同住宅の価格の一例を参考までに下記に示します。

  木  造   軽 量 鉄 骨  鉄  骨  造鉄筋コンクリート造
 東 京 110,000114,000124,000158,000
水 戸92,000106,000108,000126,000
大 阪100,000103,000113,000148,000
全国平均91,640104,120111,540137,580
新築建物課税標準価格認定基準表(共同住宅) 令和3年度~令和5年度

大都市の東京と大阪でも、同じ東京法務局管内の東京と水戸でも、これくらいの差がありますので、その物件の該当地域をしっかりと参照する事が大切です。また、参考までに全国平均値も入れてみました。

経年減点補正率表について

経年減点補正率とは、家屋は年数の経過によって損耗していくため、家屋が建築されてからの年数によって生じる損耗の状況による減価等を表したものです。 一般的に経年減点補正率は、家屋が古くなるにつれて下がっていきます。

また、第2章 家屋 第2節 木造家屋では

〔損耗の状況による減点補正率の算出要領〕
1 経過年数に応ずる減点補正率
(1) 経過年数に応ずる減点補正率(以下本節において「経年減点補正率」という。)は、通常の維持管理を行うものとした場合において、その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定めたものであつて、木造家屋の構造区分及びその延べ床面積1.0㎡当たり再建築費評点数の区分に従い、「木造家屋経年減点補正率基準表」(別表第9)に示されている当該木造家屋の経年減点補正率によつて求めるものとする。

と表示され、第3節 非木造家屋では、同様の記述があり、 「非木造家屋経年減点補正率基準表」 (別表第13)に示されるとあります。

よって、難しいことを書いていますが、簡単に解釈すると

評価額 = 再建築に必要な金額 × 建物の劣化等による減価

と考えて良いと思います。

概算を算出するうえでは、ここでいう「再建築に必要な金額」が 新築建物課税標準価格認定基準表の金額であり、 「建物の劣化等による減価」が経年減点補正率の率であるとの理解で良いと思います。

では、どの経年減点補正率を採用するかという事ですが、登記所に新築建物課税標準価格認定基準表と一緒に経年減点補正率表の掲示がされていますが、これについては「木造建物減価補正率」と「非木造建物減価補正率」の二種類が表されています。しかし、この表の注釈にもあるように「 木造家屋経年減点補正率基準表 」及び「非木造家屋経年減点補正率基準表」から平均値を算出したものです。

平均値とはどういうことかというと、木造であれば、「専用住宅、共同住宅、寄宿舎及び併用住宅用建物」、「農家住宅用建物」、「ホテル、旅館及び料亭用建物」等の9種類で、かつ、再建築費評点数区分の4種類を平均したという事です。また、非木造であれば、「事務所、銀行用建物及び2~8以外の建物」、「住宅、アパート用建物」、「店舗及び病院用建物」等の8種類で、かつ、構造別区分の5種類を平均したという事なので、かなり誤差が大きくなるとの判断で、この表のもとである以下の表を使用して建物評価額算出をしています。

計算式としては、「再建築に必要な金額」とは、新築建物課税標準価格に面積を掛けることにより算出できるので、

評価額 = 新築建物課税標準価格 × 延べ床面積 × 経年減点補正率

この例題では、地域としては水戸、鉄筋コンクリート造(RC造)、築21年、延べ床面積:619.47㎡との条件なので

126,000円×619.47㎡×0.5421=42,312,650円   となります。

まとめ

土地・建物の評価額を正確に把握するには、固定資産評価証明を参照するのが最も正確ではあるが、それが入手できない場合の概算を算出する方法として、

土地評価額の場合は、固定資産評価は全国地価マップを参照し、路線価評価は国税庁サイトを参照する。

建物評価額の場合は、各法務局にある新築建物課税標準価格認定基準表と経年減点補正率表をもとに算出する事により、概算を算出することが出来る。

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